長編

昼と夜のデイジー 48

かろうじて拾える字を拾う。 『別宅が売ら…ときに…の行方を気…』 『道具…処分…確かめ…ショック』 『お嬢様の…』 「では」 ベッドのデイジーを見下ろしていたヤマダが静かに立ち去って。 ソマリが言わんとしていることが霞の…続きを読む

昼と夜のデイジー 47

メイド長が何かなんて、あるわけない。 言い聞かせながら、デイジーは水をコップに注いだ。 今デイジーが事を起こす前に、メイド長に何かあるという可能性を伝えておけるのは誰だ? いない。 先ほどのふるまいを鑑みるとヤマダも怪し…続きを読む

昼と夜のデイジー 46

カタン、カタンカタン 二つの何かが奥で動く。 さらにもう何個か音がしたところでデイジーは背中に下からの風を感じた。 しゃがんだまま後ろに体の向きを変える。 下に溝があり、そのうち手前半分が下――おそらく1階――に通じる穴…続きを読む

昼と夜のデイジー 45

―――――ヤバイ!!!! 叫びにならないデイジーの叫びをよそにヤマダは懐の中に手を差し入れたまま廊下の床に転がるヘアピンを拾い、さっとデイジーに歩み寄った。 「なにする気?」 ヤマダはデイジーのすぐ横にかがんで、デイジー…続きを読む

昼と夜のデイジー 44

決行の日。 それは警察署に行った翌々日のこと。 父親は今朝発った。 母親は泊まり掛け。 弟はまだまだ寄宿学校ONシーズン。 刑事は取調中。 だからドルもまだ拘束中。 面会で気落ちし、体力的にも慣れない場所で疲れたデイジー…続きを読む

昼と夜のデイジー 43

警察署から戻ったデイジーは自室に引きこもった。 今にも倒れそう、そんな体で。 でも頭の中では考えていた。 あと一日二日落ち込んで部屋に篭る様子を見せておけば、恐らくメイドが手薄になる。 いままで何時もそうだった。 ヤマダ…続きを読む

昼と夜のデイジー 42

沈黙。 最後のデイジーの疑問符が木霊しているような錯覚に陥る。 ドルは瞬き一つせずにデイジーをじっと見つめている。 視線の揺れは動揺だろうか。 不安げな、強く何かに縋るようなその視線。 膝の上に乗ったドルの手は、その中の…続きを読む

昼と夜のデイジー 41

「お父様に止められるとは思わなかったのですか?」 旅行から帰宅した翌々日、警察署へと向かう馬車の中。 当然のように無言となっている空間で珍しくヤマダが口火を切った。 「思わなかったわ。 だってお父様、私に興味ありませんも…続きを読む

昼と夜のデイジー 40

話を総合すると、ドルはドル・コルウィジェという家庭教師ではなく、なんとか(通称がドルになる)・コーウィッジという名前の没落した領主のご令息ということか。 手紙を元通り封筒に仕舞い、荷物に挟み込む。 この内容が嘘である可能…続きを読む

昼と夜のデイジー 39

「どうぞ」 数日後、デイジーの体が安定し、予定より遅れてホテルから帰宅の途に就こうというその日。 ヤマダはデイジーにそれを差し出した。 「ありがとう」 ヤマダからメイド長経由で手渡しされた一通の手紙。 バタンとドアが閉ま…続きを読む