いつもは静かな王宮前の広場だが、その日はにぎやかなどという生易しい言葉で言い尽くせないほどだった。 バルコニーには花。紙ふぶきの用意も万全である。 「ケイトクはまだか?」 ジルコーニはとっくにタキシードに着替え終わ…続きを読む
長編
男性化志望者とその友人 37
「ジル、僕のコト好き?」 「ああ。好きだ。って、何回言わせれば気が済むんだお前は」 ──―――いくらでも良いよ。 口に出すには台詞が臭すぎた。 「さあ。何回がいいかな♪」 「そういうお前はどうなんだ、ケイトク」 ジル…続きを読む
男性化志望者とその友人 36
「だから、最後に少し、いい思いさせてもらっても良いだろう?」 ジルコーニはそう言い放つと、ケイトクのあごを軽く持ち上げた。そして、唇にキスをする。啄ばむようなものから、深いものへと変わる。 ケイトクは、何もしなかった…続きを読む
男性化志望者とその友人 35
俺は王子の婚約者にはなれなかったが、王子の親友にはなった。 俺は家を継ぐ予定ではなかった。次男だったから。だが、歳の離れた兄が死に、俺が継ぐことになった。 お前のことは、友達だと思おうとした。思春期前後は苦痛に満ち…続きを読む
男性化志望者とその友人 34
朝十時。仕事はもう始まっている。 ケイトクは、ジルコーニが来るのを今か今かと待ちわびながら、椅子に座っていた。 ゼタには部屋の外で待つように言ってある。今回だけは、二人きりで話がしたい。ゼタはケイトクの思いを汲んで…続きを読む
男性化志望者とその友人 33
まるで子供が楽しい遊びを見つけ、それを親に報告するようだった。 「全く。そんなことに国家を巻き込まないで下さいよ」 「そんなことに国家を巻き込むから面白いんじゃないか」 ゼタはそのデミアンの顔に、テレイアがダブって見…続きを読む
男性化志望者とその友人 32
「二ヶ月か。まあ、よしとしよう」 デミアンは悪びれなかった。腹に一物も二物も抱えた微笑は、まさしくデミアン・バロッケリエールその人だった。 「奥さんを連れ戻したいんだったら、直接言えば良いでしょう。どうしてまたこんな回…続きを読む
男性化志望者とその友人 31
その日の時間ぎりぎりまで、ケイトクは靄を晴らすことが出来なかった。 「ゼタ、僕って演技してるかな」 「はぁ?」 ゼタは間の抜けた声で返答した。 「いや、今日女の子っぽくしようと思ったのは、その…ジルコーニが喜ぶかな、…続きを読む
男性化志望者とその友人 30
今日やる予定の仕事も時間内に終わらせ、夕食も済ませたケイトクは、風呂に浸かって一日の疲れを癒していた。 女性化してこれだけ経つと、さすがに自分の体にも慣れてくる。最初は、風呂や着替えの都度に少し赤面していたのだが、そ…続きを読む
男性化志望者とその友人 29
「わからん!!」 ケイトクは、ゼタがテレイアに会ってから三日経った今日も、何がなんだかよく分からなかった。 調べるところは調べ尽くしたはずだ。一ヶ月半に及ぶ護衛生活と、解けない謎が、ケイトクを苛立たせる。 熱愛騒動…続きを読む